吉野の桜 (3)

 平成23年4月12日、吉野山の桜を見に再訪した。平成18年4月17日以来5年ぶりである。平成18年の探訪記は、昨年(2010年)4月このブログで 「吉野の桜(1)、(2)」 として発表したとおりである。今回は写真を加え、前回の文章と重複する部分はできるだけ省いて綴りたい。

 4月12日という時期は、吉野の桜としてはやはり少し早かった。下千本、中千本は丁度満開であるが、上千本は遠目に見て開花していない。中千本あたりでまじかに花見をするには一向に構わないが、全山桜という吉野らしい風景が楽しめない。
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                   下千本の満開の桜

 今回は観光バスで訪れた。吉野川沿いの国道169号線をそれて吉野大橋を渡り、九十九折れの狭い坂道を上り吉野神宮を過ぎ、吉野山の稜線に出たところが下千本観光駐車場だ。午後1時に着いたが、火曜日というのに数十台の観光バスが並んでいる。マイカーも駐車できるが予約制で飛び込み駐車はできないらしい。駐車場の先は桜の季節は車両通行止めであるから、予約してないと引き返すほかない。

 駐車場から5分も歩くと吉野山稜線の花見の起点、大橋だ。稜線の鞍部にかかる小さな橋で、下に流れはない。朱塗りの欄干が鮮やかだ。このあたりの花の眺めも良い。吉野駅から歩いて登る道もここで合流する。ロープウエイの山上駅もこの近くだ。ここから金峰山寺(きんぷせんじ)に至る道の両側は土産物屋と露店が連なっていて花見どころではない。花を見たかったら谷底を覗くほかない。
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                    水の流れのない大橋
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                    賑わう土産物屋通り

 金峰山寺の中心、蔵王堂に至る道筋には黒門、銅の大鳥居、仁王門と国宝、重要文化財級の施設があり、見上げて往古を偲ぶのもよい。道は観光客であふれかえり、土産物屋の呼び込みもかまびすしい。土産の中心は柿の葉寿司、桜寿司、桜餅、吉野葛とその派生品といったところか。桜餅を包む桜の葉は、そのための品種があると聞いたことがあるが、柿の葉寿司を包む柿の葉も、やはり専用の樹種があるのだそうだ。そう聞かされて寿司を包む柿の葉を眺めると、普通の柿の葉と比べ立派で大きい。
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                     銅の大鳥居

 駐車場から約20分歩き、高低差約40mを上ると蔵王堂(金峰山寺の本堂)に着く。高さ34m、二層の大屋根、36m四方の大伽藍は安土桃山時代に建てられたもので仰ぎ見るほどに壮大だ。国宝に指定されている。春の特別展が開かれていて500円の拝観料を払って内部に入る。美術品の鑑賞眼もないのですっと通り過ぎるだけだが、年古りたる仏像、巨大な仁王像や円柱には荘厳さを感じる。
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                     国宝 蔵王堂

 丁度、4月11日、12日は花供会式という法要が営まれ、奴行列を先頭に鬼、稚児、山伏、僧侶、大名駕籠の行列が錬ったそうだが、お昼頃で終わったらしくすでに片づけにかかっていた。
 蔵王堂から上手を中千本と呼ぶらしいが、土産物屋、塔頭の間を縫って吉水神社まで足を運ぶ。
途中、山伏の一行がほら貝をふきながら東日本大震災への義捐金を呼びかけている。通る人が次々と募金箱にお金を入れている。誰しもそうせずにはいられないほどの大災害だったのだ。呼びかけの主役が山伏というのが、いかにも修験道の根本道場である吉野らしい。
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                  山伏による東日本大震災募金

 神社への参道から桜を手前にして蔵王堂を眺める景色も一幅の絵で、携帯電話のカメラも含め皆レンズを向けている。神社の境内に一目千本という格好の展望所がある。ここからは中千本、上千本の一山を埋める桜が一望できるのだが、今日は上千本あたりは蕾のままで山の茶色の地肌が透けて見え、なんだかわびしい。
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               吉水神社参道からの蔵王堂の眺め

 奇しくも、吉野で花見をした翌朝4月13日の日本経済新聞文化欄に「吉野山3万本の桜守」という手記が掲載された。吉野の桜の現状を知る上で興味深いので紹介したい。筆者は紺谷与三一さんという吉野の桜守の人である。
 紺谷さんはほかの一人とともに専従作業員として50万平方メートルに及ぶ桜の山を、管理主体である住民らでつくる吉野山保勝会から委嘱を受けて13年前から働いておられる。
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        吉水神社の展望所から見た中千本、上千本(写真上方)の眺め

 それによると、1594年に豊臣秀吉が盛大な花見の宴を催してから桜の名所と呼ばれ始めた。以後各地から人々が訪れ、旅の記念に苗木を植樹し、桜は増え続けたという。
 問題は、ヤマザクラの寿命約百年を超える老木が多くなり、あちこちで立ち枯れが進んでいることである。加えて若い木々にも異変が発生し、根が地中の水分を吸えなくなり枯れる現象が広がってきている。キノコ類の菌糸が繁殖し根に侵入したことが原因と研究者から指摘されているそうである。

 対策として樹勢の良い老木を見つけ、その種を自分の畑でまいて苗木に育て、4年生の苗木を植樹しているが1年に100本程度で遅々として進まない。幼木を鹿の害から守る苦労もあるという。毎年春になると花を咲かせて当然と思いがちだが、現状は楽観できないようだ。 

この記事へのコメント

ともこ
2011年05月11日 09:52
お天気もよさそうで、いい時にお花見行ったのですね

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