山形県の旅:最上川舟下り

 平成25年7月21日、家族旅行で山形県を旅し、俳人松尾芭蕉にならって最上川舟下りをした。
 この日は曇り日で東北地方は梅雨も明けやらず、数日前には山形県下は豪雨に見舞われ、最上川も濁流となっていた。舟下りも前日やっと再開したばかりで、豪雨の折は水位は5m上ったという。川面に傾く木の高い枝先にはあまたの布切れが引っかかっており、豪雨の凄さをうかがわせた。
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           数日前の豪雨で濁る最上川と左岸

 私たちは車で山形市方面から国道13号を北上し、新庄市で左折して国道47号へ入り戸沢村の国道沿いにある最上川芭蕉ライン舟下り古口乗船所に着いた。気付かなかったがJR陸羽西線古口駅が徒歩5分のところにあるという。
 舟下りの運行内容は4月~11月の間、第1便が9:30発船、以後10~14時の間は毎時50分、そして最終便は15:30発船、乗船時間は60分、料金は大人1970円、降船場所まで車の回送を希望する場合は普通車1台2500円となっている。なお、駐車場(切符売場)から乗船場所まで距離があるので、最低5分の余裕を見ておく必要がある。

 私たちは10:50の便に乗船した。舟は和船でエンジン付き、船べりに対面式に座席があり中央にテーブルがしつらえてある。頭上はよしずや雨よけが架けられるようパイプが渡してある。船頭がひとり乗り込み後方で舵を操り、マイクを持ち観光案内も兼ねている。乗船定員は20~25名くらいであろうか。乗船するとすぐ、救命具が座席の下にあるので危急の折は身に着けるよう告げている。
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 乗船してみると最上川は大河で水量豊か、ゆったりと流れている。だが、川底の流れは速いそうだ。時折、小さなさざ波が立っている場所もあるが、岩礁の間を縫うように下り水しぶきを浴びる、というスリルはなく危険は感じない。悠久の流れにゆったりと身を任せ、静かに周囲を見渡し往古を偲ぶといった気分である。しかし、深緑の水面を期待したのにこの濁流ではいささか情緒を削ぐ。
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             客を降ろして戻る観光船

 舟下りしていると客を降ろして乗船場所に戻る舟にも何度か出会う。私たちが乗った業者のほかにもライバル会社があるという。
  この舟の船頭はしゃべり巧者で、奥の細道を語り、沿岸の風物を語り、民謡を聞かせ、おやじギャグで沸かせ、最後まで客を飽きさせることなく、さすがこの道のプロと感じ入る。
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             舵を操りしゃべり巧者な船頭

 舟下りは自転車で駆けるほどの船足で進むが、途中で一度岸に着け5分間のトイレ休憩がある。そこには売店があり軽い飲食物を買わせようという商魂がある。私たちは鮎の塩焼きを買った。
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          途中で立ち寄る船着き場の浮き売店

 舟下り区間の最上川は、左岸は山が迫ってはいるが国道とJR陸羽西線も走り、時折人家も見えるものの大きな集落もなく静かなたたずまいだ。。
 ところで右岸は黒森山(436m)の山塊が一気に最上川へなだれ落ちるような急峻な崖が迫っている。そのため沢山の滝が川へ落ちている。左岸も含めれば十以上の滝を見たことになる。名瀑と呼べるほどの大きな滝もなく、中には渇水期には姿を消すものもあろうが、青葉の茂みの中を幾筋も落ちている。
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            左岸にいくつも見える滝の一つ

 ともかく手つかずの千古の姿のままだ。同じ景色を芭蕉も眺めたのかと思うと感慨深い。例外と言えば、今は廃家となっている人家が1戸あったということと、岸辺に仙人堂という祠と赤い鳥居があるくらいだ。後者は奥の細道にも記されている。右岸は道路なく従って橋も架けられず高圧電線鉄塔も邪魔していない100%のネイチャーだ。
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       奥の細道にも記されている白糸の滝と仙人堂

奥の細道
 このあたりで芭蕉は 五月雨を集めて早し最上川 と詠んでいるが、当初は「集めて涼し」としたものを舟下りの実感から「集めて早し」に改めたという。それほど流れが速かったのだろう。
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   芭蕉も乗ったとみられる実物大の舟(乗船所に置かれている)

 また、芭蕉の舟下りはもっと上流の大石田という所から始まっているらしい。
 奥の細道ではこのあたりどのように描写されているか振り返ってみたい(以下原文のまま)。

 「最上川のらんと大石田と云所に日和を待つ。 (中略) こてんはやぶさなど云おそろしき難所有。板敷山の北を流て果は酒田の海に入。左右山覆ひ茂みの中に舟を下す。 (中略) 白糸の滝は青葉の隙隙に落て仙人堂岸に臨て立。水みなぎって舟あやうし。(以下略)」

 こうして1時間かけて草薙という降船所に着く。感想は水と自然に触れ、奥の細道の風流を楽しむのならこれも一興、山形の旅に加えてもよいと思う。
 なお、乗船所、降船所とも売店、食堂があり時間の調整には困らない。降船所からは最寄りのJR高屋駅及び乗船所へ戻るバス便も出ている。
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            立派な草薙降船所施設

この記事へのコメント

2013年10月25日 21:05
「集めて涼し 最上川」。
大石田町で,石碑を見たことがあります。

芭蕉。大石田で3泊。その前は尾花沢に10泊。
大石田には「請われてしょうがなく泊まった」というような文章が残っているそうです。

最上川舟下りは未経験です。今後の楽しみです。

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