秋の信濃路 (3):安曇野の美術館

 平成26年11月1日 (土) 雨時々曇り
 6:45起床。雨が降っている。早速6階の展望浴場で入浴する。北アルプスは雨で見えないが、安曇野の田園がもやって見え、あるかなきかの風情が情緒をかきたてる。真下を見ると穂高荘の敷地の杜が見事に紅葉している。真紅の広葉はふうの木だろうか。針葉樹も交え高木で杜を作っているが、お天気が良ければぜひ散策してみたい気持ちに誘われる。
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        穂高荘6階より眺めた雨に煙る安曇野と穂高荘の杜

 9:30宿発の送迎バスで穂高駅へ向かう。穂高駅前からは「あづみ野周遊バス」を利用する。これは穂高駅前を発着点として安曇野の主要観光地を巡るバスで3コースが用意され、一日乗車券が大人800円である。どのコースでも一日自由に乗り降りでき、1コースは一日8便、2コースは一日4便運行している。ただし、4月から11月初旬までの運行で、しかもゴールデンウィークと夏休みを除き、ほぼ土日限定の運行で注意を要する。(問い合わせ先:0263-82-9363又はhttp://www.azumino-e-tabi.net/)
 なお、安曇野と呼ばれる地域には大小、さまざまなジャンルのミュージアムが20近く存在する。目標を定めていくつかを巡るほかない。

安曇野ちひろ美術館
10時発の西回りコースちひろ線で安曇野ちひろ美術館へ向かう。22分で着く。駐車場から美術館入口までの園地のアプローチが長く、安曇野を見まわす余裕と美術鑑賞に入る心の準備を与えてくれる。遠くは雨に霞み、紅葉はしっとりと滴を垂らしている。
 美術館は平屋で広く、様々な形で岩崎ちひろの画業を紹介してくれる。私にはほのぼのとした童画に魅了される、としか表現できる力も知識も持ち合わせていない。
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           ちひろ美術館入口
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          ちひろ美術館より眺めた穂高の山

 岩崎ちひろは1918~1974が生没年で、少女期から絵は学んでいたが、生活のため戦後、広告絵を描くようになり、本格的な絵本・童画作家として広く知られるようになるのは晩年の1963年ごろ以後のことのようである。この頃から水彩画・子どもの絵に専念するようになった。文章に付随する絵本でなく、絵で展開する絵本作りに力を尽くした功績が大きいという。
 没後、まだ著作権の確立していない童画の散逸を防ぐため、1977年東京の自宅跡にちひろ美術館が設立され、手狭となった1997年両親の疎開先であるこの地に第2美術館(月曜及び2月休館)として設立された経緯がある。
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            ちひろ美術館の広いロビー

碌山美術館  
 12:20発の周遊バスで穂高駅へ戻り、駅近くの「安曇野」という蕎麦屋で「鴨せいろ」を食べる。鴨肉がおいしい。
 穂高駅から線路沿いの道を鈍足で10分余歩き、碌山美術館に入る。よく観光資料で紹介される教会風の蔦のからまるレンガ造りのあの建物だ。手前に白樺の木を配してやはり絵になる。
 碌山美術館は彫刻家萩原守衛(号:碌山、、1879~1910)の作品を飾るため、彼が生まれた穂高の地に昭和33年、30万人の寄付と支援を受けて開館した。キリスト教に傾倒した彼を偲ぶため教会風建築になったという。
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            碌山美術館本館と蔦のからまる本館側面
  
 彼は20歳で上京し、さらにニューヨーク、パリで絵を学ぶが、25歳の時ロダンの「考える人」に衝撃を受け彫刻への転向を決意する。翌年には高村光太郎を知り交わる。
 教会風の碌山館(本館)で学芸員による15分間のギャラリートークを聴く。彫刻観賞の極意は一方から眺めるだけでなく、彫刻体を一周して鑑賞し、さらには目線の高さだけでなく、下から仰いだり、小さい作品なら上から眺めたりしないと良さがわからないという。なるほどと思い中央に置かれた代表作、重要文化財となっている「女」という裸像を鑑賞する。確かに美しく、肢体はしなやかな動感を見せながらも気品を感じる。本館内の彫刻作品は、31歳で夭折したせいか10数体しかない。
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              雨のベンチ
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             ストーブが焚かれている休憩コーナー

 本館のほかに三つの展示棟があり、碌山の油彩画、デッサンや彼と交わりのあった画家、彫刻家の作品もある。高村光太郎の作品も私が知っている斉藤与里の絵もある。また現代作家の特設展も企画している。
 庭に置かれている彫刻作品は碌山作の「労働者」という作品だけだが、ロダンの「考える人」を思わせこれも見ごたえがあり唯一撮影できる。蔦のからまる煉瓦の建物は、秋の深まりと共に風情を増し大いに写欲をそそるが、三脚を駅のロッカーに置いてきたため雨の情感を丁寧に撮れないのが惜しい。
あわただしく時間は過ぎ、15:59発松本行きの列車に乗り帰宅の途に就く。
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                 碌山作 労働者像

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