静岡県の旅:世界文化遺産・韮山反射炉

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反射炉全景(全部で4基あるのだが鍵の手に建っているので2基は隠れて見えない)

平成27年10月1日 (木)  曇り
 修善寺温泉の見物を終えて、世界文化遺産・韮山(にらやま)反射炉と重要文化財・江川家住宅を見るべく、再び伊豆箱根鉄道の客となり伊豆長岡駅に下車する。両施設とも駅から徒歩範囲にはなく、バスも不便でタクシーを利用するほかない。土日は見物コースのバス便もあるようだが、今日は平日でそれもかなわない。現地で人の話を聞いて次のように計画し、実行した。
  伊豆長岡駅→韮山反射炉  タクシー 850円
  韮山反射炉→江川家住宅  タクシ- 1250円
  江川家住宅→韮山駅     タクシー 900円 (江川家住宅にはタクシーは待機していないので呼び出し)
  韮山駅   →三島駅     伊豆箱根鉄道 270円

 タクシーを降り立つた場所は丘陵の山裾にあたり、韮山反射炉は平日にかかわらず相当な人出である。それもそのはず、平成27年7月世界文化遺産に指定されたばかりである。観光バス利用の団体客が多い感じで周囲には飲食、土産物店も立ち並んでいる。反射炉の敷地は伊豆の国市が管理しており、100円の管理協力金を払って入場できる。
 幕末にはここで鉄を溶解し大砲まで作っていたのだが、今は大砲製造の諸施設はなく反射炉のみが高さ15.7mのレンガ造り煙突を付けて4基突っ立っている。煙突は耐震補強のため、近年になって鉄骨フレームで囲ってある。偉大な高さを仰ぎ見ながら幕末、よくも日本人だけの力で作ったなと感心する。
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反射炉下部の四角の穴は燃料を焚くための風入れ口 (ふいごのような人力に頼らず自然送風、そのため煙突が高い)
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        煙突横の二つの穴が薪や石炭の入れ口と銑鉄の入れ口

 パンフレットの説明によるとそもそも反射炉とは、17~18世紀にかけてヨーロッパで発達した金属を溶かして大砲などを鋳造するための溶解炉で、内部の天井がドーム状になった炉体部とレンガ積みの高い煙突からなる。石炭や薪などを燃料として発生させた炎と熱を炉内の天井で反射し集中させることにより、鉄を溶かすことができる千数百度の高温を実現する。このような炎と熱を反射する仕組みから反射炉と呼ばれる。
 反射炉の仕組みは、要所要所に説明板が立ててあるが、文字と図を見てもしっくりと頭に入らない。
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上の四角の穴が溶解した鉄をかき混ぜたり、品質を調べる所、その下の丸穴が鉄のかすを取り出す所、一番下の丸穴が溶解した鉄が流れ出す所

 1853年のペリー艦隊の黒船来航以来、幕府も海防体制の強化を迫られ、開明的な伊豆の代官江川太郎左衛門英龍の進言を受け入れてこの地に反射炉を建設するに至る。レンガは伊豆の現在の河津町で製造し、1854年に着工、1857年に完成、早速同じ場所で大砲の鋳造にかかり、1858年には大砲の試射に成功している。幕府には反射炉製造技術がないので、先進地の佐賀藩の技術者の派遣を得て完成させている。
 このように反射炉は各地で作られており、薩摩藩、佐賀藩、長州藩などが記録されている。筆者も鹿児島市の磯庭園で薩摩藩の反射炉を見たが炉体部が残るのみで煙突は壊されていたので、完成形が残っているのはここだけであろう。
 いずれにしても、どの藩も西洋(オランダ語)の技術書を解読するだけで、西洋人の助けを借りないで完成させているのだから、当時の武士と職人の英明さには恐懼する。
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          ここで作られた18ポンドカノン砲の模造品

江川邸
 見終わって再びタクシーを走らせ江川邸に着く。約400年前建築された代官江川氏の屋敷で、重要文化財に指定されている。江川氏は中世よりこの地に住む豪族で時代時代の支配者に仕え、徳川の世となり伊豆が天領となるに及んで代々、代官に任ぜられている名家である。代官というと転勤族と思いがちだが、世襲性の代官もいたのだと初めて知る。代官所にあたる韮山役所は江川邸に隣接してあったのだが今は跡地のみである。
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          江川家玄関(屋根の銅板は昭和33年葺き替えたもの)
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              主屋(玄関の反対側)と右は肥料蔵

 それだけの名家だけに、主屋は552㎡もあり、大屋根の高さは12mと雄大、広い土間からは豪壮な屋根組みを見上げることもできる。他にも屋敷内に配置された表門、裏門、二つの米蔵、肥料蔵、武器庫も見ることができる。面白いのは江川英龍がパン(今の乾パンのような保存性の高いもの)を兵糧として用いようと考え、自邸内にパン窯を築き実際にパンを焼かせた。そこで全国パン協会は英龍を「パン祖」として顕彰し、パン祖の碑が立っている。
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              土間の上の梁構造
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         肥料蔵に隣接する二つの米蔵(今は展示所となっている)
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               パン祖の碑

 屋敷内にはいろいろな資料も展示されているが、他の旧家では見ることのできないユニークなものも多い。ここの見物者はちらほらであったが、ぜひ反射炉とセットで見物することをお勧めする。(江川邸の入館料600円、開館時間は9:00~16:30、ただし水曜日は9:30~15:00、毎月第三水曜日は休館)
 こうして1泊2日の伊豆の旅を終わる。
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             大砲御製造場の旗
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              大砲の玉 実物



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